『ドラゴン。』

むかしむかしのことでした。
山奥にひっそりと暮らしている一匹のドラゴンがおりました。
見た目がたいへん恐ろしく、口からは火が出るので人間達はたいそう恐れていたそうです。

『ドラゴン』人は、おいらをそう呼んでいるらしい。
怖がっているとも聞いた。
たまに、武装したヤツがおいらのところにやって来る。
「やあ!。」って挨拶したとたんいなくなるんだ。
おいらのまわりには、焼け焦げのおこげがやたら落ちている。
いつも不思議なんだけど。
ヤツが来るまでは、ナニもないんだ。だけどヤツが現れておいらが、挨拶をすると
おこげが落ちている。誰か知っているヤツはいないかな?。
何のためにおいらを訪ねて来るのか分からないし、だいたいナニ言ってるのかもわからない。
突然チクチクつっつかれたりして、こっちだっておちおち昼寝も出来やしない。
おいらは、ただ山の奥の方でひっそりと暮らしているつもりだけど
それが、ヤツらには気に入らないのかしら?。
それならしょうがない。だけど、おいらはどこに行けばいいんだろ?。
生まれた時からずっとココにいたし、仲間も居たんだけど空気が悪くなって
病気になって死んでしまった。
おいらも病気になって死んじゃった方がいいのかしら?なんて思ったら、
目からぽたぽた水が出て来る。
こんな気持ちになるくらいなら、ココを離れてどこか遠いところに行こう。
ヤツらが入って来れないところへ。
荷物をまとめて旅に出たら、そこにはいろんな生き物がいた。
さっそく、ドードーと友だちになった。
他にも、いろんな奴がいた毛むくじゃらの奴やえら呼吸の奴。
みんなおいらの事、恐がりもせず迎えてくれた。
おいらは、しばらく眠った。今まで、おちおち眠れなかったから、ここぞとばかりに眠った。
だけど、目が覚めた時おどろいた。
まるで風景が変わっていたから、見た事もないような所。なんだか恐い。
誰もいないし、真っ暗だし目の前には緑色に光る何かが見えるだけ
おいらは、大きな水の入った四角い部屋の中にいた。
みんなは何処にいっちゃったんだろう?ドードー達の姿も見当たらない。
探しに行かなくっちゃ。だけど外に出られない。ドンドンたたいてもダメだった。
また、おいらは独りぼっちなのかい?そう思ったら、目からぽたぽた水が…。
また、こんな気持ちにならなくちゃいけないなんて…。

ドラゴンは、いっぱい泣きました。そして、泣き疲れて眠ってしまいました。
朝になって、博物館のオープンの時間になりました。
たくさんの人が、やって来ました。
「大っきい怪獣がいるよ、パパ。」
「ほんとだね。大きいね。」
親子連れが、ドラゴンの前で話しています。
「コイツ、悪いヤツなんだよ。ぼく、本で読んだもん。」
「ぼくちゃんは、何でも良く知っているんだね。」
「スーパーマンが退治したんだよ。スーパーマンは、ぼくらの為に悪いヤツをやっけてくれるんだよ。
ぼく、大きくなったらスーパーマンになるの。」
のんきな親子は、言いたい事を言うと次のサカナを探しに行きました。
ドラゴンは、相変わらず眠り続けました。



おしまい。


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