『ヒルディーローズディー』

ヒルディーローズディーは、ちいさなお花です。
人間の目には見えないくらい、とってもちいさいのです。
ヒルディーローズディーの住む世界は、とても暗いところでした。
空には厚い雲がおおっていて、お日さまの姿も見えません。
足元は、かたいアスファルトでおおわれていて、空気の色は灰色でした。
それでも、ヒルディーローズディーは力いっぱい咲き続けます。
むかしは、仲間もいっぱいいました。お日さまも、彼らに顔を見せてくれました。
だけど、いつかしらこの世界で生きて行くのが難しいとある者は、海の中へ。ある者は、空の上に。
みんな旅立って行きました。
そんな仲間達をよそに、ヒルディーローズディーはここを離れようとはしませんでした。
『おや!お前さんまだこんな所でがんばってるのかい?。
もの好きだね?こんなとこにいても仕方ないのに。ほかのやつらのように、もっといい所に行けばいいのに。』木枯らしが、おせっかいに言いました。
『…。』
『おれは、いろんな所に行って、いろんなやつを見て来たけど、
お前さんみたいなやつは、めったといないぜ!。変わってやがんな。』
ヒルディーローズディーは、木枯らしがあまりにも一方的に話すので困ってしまいました。
『ぼくは、別に変わってるなんて思っていないんだけどな。
ただ、ここに花として生まれて、花としてただ咲いているだけだよ。
ほかのみんなは、どうだか知らないけど。ぼくは、空の星になりたい わけでもなくて、海のヒトデになりたいわけでもない。
花として、ここで精一杯咲いているだけなんだよ。
当たり前のことだと思うんだけど、きみには不思議な事なの?。』と、いいました。
だけど、木枯らしはせっかちだったので、ヒルディーローズディーの 話しを最後まで聞かずに、どこかへ行ってしまいました。
ヒルディーローズディー。彼は、見た目にはとてもちいさな花ですが、 ほんとは、とってもおおきな花なのです。
だって誰になんと言われても、自分の気持ち正直に生きているのですから…。
これからもずっと、ヒルディーローズディーはこのアスファルトの上で大きく強く 咲き続けていくのでしょう。



おしまい。


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