『もじゃお君。』

どったら村の、こったら山には、もじゃお君が住んでおりました。
もじゃお君はお日様がのぼると寝て、お月様が顔を出すころ起きてきました。
体は毛むくじゃら、ギョロッとした大きな目に、笑うとするどいキバが顔を出す大きな口
見ためは、とってもこわそうだけど、山の動物たちと助けあって生きていました。
ある晩のことです。もじゃお君は、目をさますと大きなあくびをひとつして
おなかの虫の鳴く声を聞いて、食べ物を探しに出かけました。
森の中をおなかをすかせて、ふらふら歩いていると、小さなキノコが、たくさんはえていました。
『いただきまーす!。』もじゃをくんは、むちゅうでキノコを食べました。
だけど、全部食べちゃうと、キノコは、なくなってしまって
次から、はえて来なくなるかも知れないのでほんの少し、残しておきました。
たくさんキノコを食べたけど、まだもう少し、もの足りないのでもじゃおくんは、湖に、魚を取りに行きました。
今日は、満月の夜おもしろいほど魚が取れました。
だけど、一人じゃ食べきれないので食べられるぶんだけもらって、あとの魚は湖に返しました。
そして、魚を食べました。だけどその前に、魚にこう言いました。
『さかなさん、いただきます。』あたりまえの事だけど、ちゃんと言います。
『魚や、キノコやほかのいろんな生き物たちは、いつもぼくに、命のプレゼントをしてくれる。
だから、ちゃんと残さずに、おいしく食べてあげなきゃ。
ぼくは、いろんな生き物の命をもらってしか生きて行けないんだ。
とても悪い事をしているような気もするんだ。
だけど、なにも食べずには、みんな生きて行けないんだよね。』
もじゃおくんは、まんまるい顔をしたお月様にお話ししながら、散歩をしました。
大きな木の近くまで来たときです。目の前に、お腹おすかせたライオンの親子がいました。
もじゃおくんは、お月様に言いました。
『また、いつか逢えるかな?。』そう言うと、とうとうぼくの番がやって来たんだと思いました。
だけど、もじゃおくんは少しも怖がったりしませんでした。



おしまい。


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