『たまごくん。』

あるところに、大きな鳥がひとりで暮らしておりました。
この大鳥の仕事は、タマゴを産む事です。
今日もいつものように、タマゴを産んでおりました。
すると見なれぬ奴らがウロウロ…。
「大きなタマゴがいっぱいあるな」1人のオトコが言いました。
「これで、大量のプリンを作って売れば、オレ達大金持ちだぞ!」
と、もう1人のオトコが言いました。
2人のオトコは、さっそく大鳥のところに行きタマゴを分けてくれるように言いました。
「何のご用かしら?」見なれないイキモノに、大鳥はけげんそうに言いました。
「あ、あの〜っ。ここいらに置いてあるタマゴは、あなたのタマゴでしょうか?」
大鳥の大きさに、たいそうビビったオトコ達はおそるおそる訊ねました。
「・・・・・・。」大鳥は、かなり警戒しました。
「実は、貴女様のタマゴを是非私達に譲って頂きたいと思いまして…。
こんなに大きなタマゴを私達は、見た事がない。是非研究したいのです。」
オトコ達は、言葉巧みに大鳥に話し続けました。
それは、朝から晩まで毎日のように…。
いい加減、オトコ達の話を聞くのにもうんざりしてきた大鳥は、1個くらいならいいか?
それに私の仕事は、タマゴを産む事ですもの。
大鳥は、オトコ達にタマゴを分けてやる事にしました。

オトコ達は、大急ぎでタマゴを持ち帰りました。
「おい、やったぞ!これだけの量があれば、何人分のプリンが作れる?」
「そりゃ〜もう、100人いたって食いきれないぞ!!」
そうです、オトコ達は研究なんてする気はサラサラないのです。
さっそく、家に帰るとプリンを作りました。もちろん特大の。
1個500円という価格で1日限定20個でプリンを売り出しました。
プリンはたいそう美味しくて、売り出したとたん完売。当然のごとく5日しかもちません。
オトコ達は、こんな美味しい事はない。美味しいプリンは、間違いなく売れるのですから。
「こりゃ〜、またあの鳥の所に行ってタマゴを貰って来よう!」
と、またもや大鳥の所に行きました。
今度は、大鳥ごと連れて来て毎日タマゴを産ませるつもりです。

「や〜!!大鳥さん。あなたのタマゴ調べたのですが…。実に興味深い結果が。そこで、もっと詳しく調べたいので、是非あなたを私達の所に御案内したいのです。」
「ナニか知らないが、私はココを離れる気はない。」そう言って大鳥は、どこかに行ってしまいました。このまま引き下がる訳には行きません。オトコ達は、なにやら相談しておりました。
次の日。大鳥が、朝ゴハンを探していると目の前に大きなイモ虫が!
「お〜ッ!これは、朝から良い事有りそうだわ。」そう言ってパクり。
すると、またイモ虫が…。なんか、古典的な鳥の捕まえ方だわ。
そう思いながらも大鳥は、捕まりました。
「やったぞ!!」オトコ達は、大喜びです。
さっそく、大鳥を連れて帰るとタマゴを産むように言いました。
少し戸惑いながらも、大鳥の仕事はタマゴを産む事。
だから大鳥は、「100個だけ産んだら家に返して!」という条件で産む事にしました。
プリンは飛ぶように売れました。オトコ達の身なりも立派になって行きました。
大鳥は、そろそろ100個のタマゴを産み終えるのでオトコ達に家に返してくれるよう言いました。
オトコ達も分かっていたのか、「仕方がない家に返そう」と言いました。
「ただし、定期的にタマゴが欲しい」と言うのです。
でも、これでは約束が違う。
大鳥は、どうしても帰りたかったのでオトコ達の条件を飲む事にしました。

久しぶりに帰って来た我が家は、すっかり変わっていました。
大鳥の住んでいた所には、小さな鳥たちがたくさん住んでいました。
大鳥のいなかった時間。それは、ほんの100日くらいでしょうか?
でもそれは、浦島太郎状態なのでした。
小さい鳥たちは、ココは自分達の家だと主張します。
大鳥もココは、自分の家だと主張する。
お互い一歩も譲らないのです。
この隙にオトコ達は逃げ帰ろうとしましたが、そういう訳にはいきません。
オトコ達にも、責任があるのですから…。
自分達が大鳥を連れて来なければ、こんな事にはならなかったのです。
オトコ達は言いました。
「大鳥さん、私達と一緒に帰りましょう。今まで通りでいいじゃないですか。」
そう、その方がオトコ達には都合が良いのです。いつでも、新鮮タマゴが手に入るし だけど、大鳥は納得がいきません。
オトコ達の勝手で、自分の家を取られるなんて!
住み慣れた家にやっと帰れたと思ったら知らない鳥が我が物顔で住んでいるのですから…。
またもやオトコ達は、そろばんをはじきました。
「ここで、大鳥を怒らしたらオレ達はタマゴを貰えなくなる。」
「それも、そうだな。一瞬小さい鳥を連れて帰ってタマゴを産まそうと思ったんだが、
小さい鳥のタマゴじゃやっぱり小さいだろ?オレ達の欲しいのは、大きいタマゴ。
どうだい?ココはやっぱり大鳥の見方をして小さい鳥には出てってもらおう。」

オトコ達は、小さい鳥をそそのかし隅っこの小さいエリアに小さい鳥たちを追い込みました。
「いいかい。お前達の体は小さい。これだけの土地が有れば十分暮せるだろう。
あの土地はもともと大鳥さんのものだから、お前達はココで暮らすんだ!」 と、命令しました。
だからといって、小さい鳥達の納得がいくはずが有りません。
だけど、自分達より体の大きいヤツらにかなうはずもなく。仕方なくそこで暮らしはじめました。

めでたしめでたしと、いくはずもなく。問題は山積み。
ゴハンを探すのも困難になりました。大鳥は体が大きいのでいっぱいゴハンを食べます。
小さい鳥も個人個人は小さいのですが、いっぱいいるので当然ゴハンもいっぱいいるのです。
それに、今まで住んでいた所よりも土地が貧しいのでゴハンも水も思うようにとれないのです。
だからと言って、今までのエリアに近付く事も許されないのです。
ヤツらの手先が見張っているのです。これは、大鳥のタマゴを他のヤツらに捕られないようにと言うのも有るのですが…。
小さい鳥達は、追い詰められてしまいました。
「このままでは、僕達は絶滅してしまうよ」
1人の鳥が言いました。
「どうせ、このままいたって飢え死にするのなら僕らは戦おう!!」
小さい鳥達は、死を覚悟で戦闘を開始しました。
「普通に大鳥と戦っても僕らは、負けるだけさ。だったら…。」

小鳥達は、力の続く限り飛びました。そして、オトコ達の家を見つけると
勢いよく家に突入し、家の中を無茶苦茶にしました。
この模様は、テレビで放送され、この上ない視聴率をとりました。
テレビを見ていた人達は、オトコ達に同情するのでした。
「小さい鳥達は、ひどい!」と、
テレビを見て、見たまましか解らないヒト達が「小さい鳥達をやっけろ!!」と叫んでいます。
ヒトびとは、小さい鳥を1羽のこらずフライドチキンにしました。
「今夜はパーティー!朝まで飲み明かそう!!」

誰もいなくなった木の上では、小さいタマゴ達が殻をコツコツと突つき始めた頃でした。



おしまい。


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